動物が大好きだと言う方を除いては、ほとんどの方は「動物園なんて子どもの頃に数回行っただけ」とか「子どもとは行ってるけど」とか「孫が出来て最近行ってるけど」など、割と身近なようで行く機会が少ないのが現状です。それでは私たちにとって、動物園は必要のないものなのか?
近年、世界各国で「環境エンリッチメント」という思想を大切にする動きが出ています。それは日本も同じです。みなさんご存じの北海道の旭山動物園がいい例です。動物が出来る限り自然な状態で飼育され、動物福祉の立場から動物にとって幸せな暮らしを実現してやりたいという方策です。
それは、水辺があり寝床があり、歩けるスペースがあり、食事のとりかたなど様々な方法があります。私たちは、ただのアミューズメントとしての動物園ではなく。動物福祉という面も考えて行かなくてはなりません。それが、子ども教育にもつながり、環境面からも街全体の人の育成になり、ひいては地球全体の保護につながっていきます。
公営とは公的な資金を使って運営される施設のことです。動物園だけでなくプールや公園、博物館、美術館、図書館など公営の施設は多くあります。国や県、市などの税金を使って運営されることですね。
現在の池田動物園は1番目の民間経営の会社になります。「株式会社池田動物園」です。入園料金の安い動物園のほとんどが公営の動物園です。
公的な資金があれば古くなった施設の改修や動物にとっても、そこで働く飼育員さんにとっても、より良い環境をつくることができます。
昔は池田動物園のような民間経営の動物園が日本には多くありました。動物園は遊園地などとセットでオープンして家族の遊び場として賑わいを見せていました。阪急や西鉄などそれは鉄道会社が経営していたものも多く、来場者も右肩上がりの成長を続けていた時期もあったと思います。(池田動物園も京山ロープウェイ遊園とセットで楽しめるアミューズメント施設でした。)
しかし、新しいアミューズメント施設が増えると客離れが進み、経営も困難になってきます。それは動物園だけの問題ではなく遊園地の問題もあります。ジェットコースターや観覧車など、このような遊具を維持するのは、メンテナンス費用や保険など多額のコストが必要です。施設も老朽化していきます。そして、不採算の施設は閉園へと追い込まれていくのです。
そんなときに、公営化になった動物園も日本には多数存在しています。
北九州市にある「到津の森公園(いとうずのもりこうえん)」という動物園と遊園地がセットになった施設は平成12年に経営不振を理由に68年の歴史に幕を降ろしました。ところが、閉園を惜しんだ市民の声が北九州市を動かし、市民の動物園として生まれ変わりました。 26万の署名をもとに民間経営の動物園が公営の動物園に生まれ変わったのです。
園内は動物園というより公園の要素を含んでいます。シロクマやパンダなどコストのかかる動物は飼育せず、園内をエリア分けして様々な植物を植えています。
植物は園内の通路だけでなく獣舎の中にまでも植えられています。
結果、動物たちは檻の中の植物を食べ動物の糞や尿で植物が育ち、より自然なカタチに近づき循環が生まれています。
当初、飼育員たちも掃除が大変だと反対意見も多かったようですが、これにより、動物園特有の匂いも減り、獣舎をより自然に美しく見せることが出来るようになったそうです。
到津の森公園の園長は「日本人は径(小道)を好むので、それを意識しています」と言われていました。
確かに園内の通路は曲線の道や細い道が幾重にも巡っています。
それとは逆に香川県にあった「栗林公園動物園」ですがこちらも民間経営の動物園でしたが2004年3月に74年の歴史に幕を下ろしました。この時も、市民から復活の要望が多くあり、署名活動も起こったようですが再び開園することは、なかったようです。
もし、残せていたなら今の時代にあった動物園を構築し、栗林公園とセットで観光の要になっていたかも知れません。
2016年2月14日に49年に亘り池田動物園の、顔としてお客さんを楽しませてくれました象のメリーが亡くなりました。
寿命の長い象だからなのか、体の大きな象だからなのか・・・亡くなった日からメリーを愛していた市民や県民の方からの献花がつづきました。「これほど、みんなに愛されていたんだ」そんな思いになりました。
もともと、私たち「おうえんする会」には、いずれは公営化というのは頭にありましたが、このメリーの死が、この署名活動のきっかけにはなっています。
これは、確定的なお話は一切出来るものではありません。私たちは市民県民の方に呼びかけ、署名を集めて岡山市長にお願いするだけです。しかし、夢や理想は持って活動しています。
先日、民間経営からわずか2年で公営化になった北九州の動物園「到津の森公園」の園長さんに会いました。動物福祉のことや園内の見せ方など、すごく熱い思いで動物園を運営されていました。そういった様々な方の意見を元に、県外からもお客さんが、どんどん来てくれるような、動物たちにとって良い環境になるような動物園になってくれたらという思いでいっぱいです。
今の場所で、公的資金を少しだけ使って存続させるというお話も出てくるかと思います。しかし、私たちの理想は、やはりもっと広い場所に移転して、良い環境でこれから先100年、200年と動物園が岡山の歴史と共に育って欲しいです。
全国政令指定都市20カ所の内のひとつとなる岡山市。そんな政令指定都市の中で公営の動物園がないのは、新潟県と岡山県だけです。新潟県には公営施設の水族館「マリンピア日本海」があります。
それでは、なぜ日本にあるほとんどの動物園が公営なのか?
それは、動物園は、子どもたちなどの学習施設であり、研究の場であり、種の保存の場であるからです。誰でも何度でも入園できる価格を設定すると当然、不採算の施設になります。それが税金投入やむなしの判断につながるのです。日本の動物園のほとんどが不採算の施設です。
公営の動物園も公的資金を使いながらも、市県民からもサポーターという名目で援助を受けています。それほど動物園とは不採算な施設になるということです。
例えば、狭い劣悪な環境の獣舎に動物たちを閉じ込めて飼育展示して、高額な入園料を取れば動物園は黒字になるでしょう。しかし、それでは「動物福祉」の面は無視された状態になり、動物の虐待と言われてしまいます。
少しでも広い獣舎でより良い環境で動物を飼育すると、動物園は赤字経営になるのです。
「そんな不採算な施設は大切な税金を使ってまで残す必要はない」という意見もあるかもしれませんが、人々の憩いの場であり、子どもたちの教育の場であり、種の保存や研究の場である動物園に本来、採算を求めてはいけないのかもしれません。
象牙や毛皮が高く売れるため密漁する人間が存在します。絶滅危惧種を保護するのも動物園の役目です。
岡山市もこの財政難の中、決断するのは難しい局面もあるかも知れませんが、観光面からも歴史的な観点からも岡山には、ぜったいに残さなくてはいけない、育てていくべき施設だと考えます。
動物園は思い出を紡ぐ場所です。世代を超えて思い出は受け継がれその町に住む人にとっての憩いの場所となります。岡山の大切な動物園を守ってください。
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